2019年10月2日

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

  

 

ブレイディみかこさんの新作。このブログでも、彼女の『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)
を紹介したことがあります。その本では、英国で保育士として働くなかで、著者が感じた子どもた
ちの生活格差、特に緊縮財政になってから、彼女が「底辺託児所」と呼ぶ保育所で、子どもを育て
る親や保育士たちが貧困にあえいでいる実態、また保育所をめぐる人々の意識の変化がレポートさ
れていました。
そしてこの新作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では、中学生になった息子さん
とのからみを中心にして、英国の公立中学校が舞台になっています。
この本でも、さまざまな格差が取りあげられているのですが、最終章で、先日とりあげた地球温暖
化対策を訴えるデモのことが出てきます。しかしみかこさんが取りあげたのは、「地球温暖化対策
を求める学生運動の世界的な広がりといったマクロな問題ではない。元底辺中学校の生徒たちが経
験した不条理というたいへんミクロな問題」(本文238pより)でした。
実はスクールランキングで下位にある学校の生徒たちは、学校からデモへの参加を認められなかっ
たというのです。理由は、「学校を早めに修了し、中学生が街に繰り出して喧嘩や窃盗といった問
題でも起こすような事態に」なることを心配してということらしい。
デモにまで格差があるとは知りませんでした。
福力

 

追記:驚くことに、学校が認めない状態で生徒が学校を欠席すると、英国では親が地方自治体に罰
金を払わないといけないそうです。その額は、父母それぞれに60ポンド。これは日本円にすると約
8,000円。また21日以内に支払わないと、この額は120ポンドに、またそれ以上放置すると、最高
2,500ポンド(日本円で約33万円)にまで(!)跳ね上がるらしい。
なぜこのような罰則があるかというと、「春休みとか夏休みとかいったいわゆるピークシーズンに
休暇を取ると旅行運賃やホテル料金が高額になるので、学期中に子どもを休ませることを親に思い
とどまらせるため」(本文242pより)だそうです。
この罰則があるため、みかこさんの息子さんはデモ参加を諦め、授業にちゃんと出席したとの事。