2017年07月15日

歴史と震災

 

 

 

毎年のように震度5クラスの地震が、起こっています。どうも日本列島は、地震の活動期に
入ったことを、私たちは認めざるを得ないと思います。
さて平成の「司馬遼太郎」との呼び声も高い磯田道史さん。上記の本には、その地震やそれ
にともなって起こる津波について、科学的データが存在しない江戸時代の古文書から、来る
べき南海・東南海地震では「何分間ゆれるのか」「大坂や名古屋は、どの程度の津波に襲わ
れたのか」「原子力発電所が集中する敦賀湾に津波が来た証拠はあるのか」などについて、
その被害を予測している章(第4章)があります。この章は磯田さん自身も、特に読んでい
ただきたいと強調しておられます。
ではその答えはどうなのか。詳しくは本書を読んでいただくとして、最後に挙げた「原子力
発電所が集中する敦賀湾に津波が来た証拠はあるのか」という問いに、古文書からどんなふ
うに考察するのかの一端を紹介しておきます。

考察の元なる史料は、ルイス・フロイスの『日本史』。彼はこの本の中で、天正地震につい
て、以下のように語っているのです。
「若狭の国には海に沿って、やはり長浜と称する別の大きい街があった」「揺れ動いた後、
海が荒れ立ち、高い山にも似た大波が、遠くから恐るべき唸りを発しながら猛烈な勢いで押
し寄せてその町に襲いかかり、ほとんど痕跡を留めないまでに破壊してしまった」

この史料に対して、磯田さんは以下のように述べています。
「若狭国に「長浜」という町はない。東京大学地震研究所編『新収日本地震史料』は津波がき
 た長浜は「高浜の誤りであろうか」とした。高浜には原発がある。高浜ではなく近くの小浜
 だったとしても大変だ。なにしろあの一帯は原発銀座である。原発に大津波がくるという話
 だ。穏やかではない。電力会社は原子力安全・保安院に説明せざるを得なくなった。発電所
 を動かすのにも古典教養が要る時代になったらしく電力会社は琵琶湖沿岸の長浜に津波がき
 たという古文書を探し出し、フロイスのいう津波は滋賀県の長浜のことである可能性をにお
 わせる報告書を提出した。しかし原発の安全性を危惧する人たちは納得しない。」
                                    (本書140ページ)

磯田さんはこの後、他の宣教師の著述をもとに、最初の疑問に対する答えを出しているのです
が、その結論については、是非本書141ページを読んでみてください。
※本書は図書室に寄贈しておきます。
福力