受験生とゲストのみなさまへ

2022年07月26日

島崎藤村「破戒」

島崎藤村の「破戒」という小説は今から100年以上前、明治時代に執筆されました。当時、夏目漱石によって絶賛された作品です。

小学校の教員である瀬川丑松は、被差別部落出身であることを隠し通すように、父から強く戒めを受けていました。周囲の偏見と差別により、「なぜ自分の故郷を語れない」「なぜ好きな人に気持ちを伝えることができない」と、追い詰められてしまいます。そしてついに、父からの戒めを破り、教え子たちに自分の出自について語ります……。

 

差別撤廃を叫ぶ水平社宣言から100年の今年、新たに映画「破戒」が公開されました。先日見る機会を得たのですが、いろいろ考えさせられました。現代においても、時代は違えど様々な人権問題や差別事象があります。いじめ、ハラスメント、インターネットによる人権侵害などは、我々の日常生活のすぐ近くに顕在します。

 

映画の中で、差別は簡単になくならないと主人公が言われ、このようなやりとりがありました。「人間というのは、それほど愚かな生き物なのでしょうか」「愚かなのではない。弱いのだ。弱いから差別する」

この言葉は、自分の心の奥底に深く印象づけられました。