校長ブログ

2019年12月10日

『美しき愚かものたちのタブロー』

  

 

作家というのは、デビューできても、その後何年も作家のポジションを維持し続ける
のはとても難しいと思うのですが、その点原田マハさんは、とても大きな鉱脈を持っ
ているなあと改めて感じました。その鉱脈とは、もちろん「絵画」という芸術。
彼女の新作『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)を読んだ最初の感想です。
今回のテーマは、日本の若者に本物の西洋絵画を見せようとした松方幸次郎の、いわ
ゆる松方コレクションの話。この松方が大金を使って収集した西洋絵画のコレクショ
ンは、第2次世界大戦の勃発でフランスに留め置かれるのですが、戦後、フランスに
接収されてしまうのです。それを日本に取り返そうと、美術史家の田代雄一や官僚たち
が、敗戦国という弱い立場でフランスと交渉するというのが、この本のお話。
ページを繰る度に時代は前後しますが、それを苦にすることなく読むことができます。
特に圧巻は、戦火の中で松方コレクションを守り抜いた日置釭三郎が出てくる後半です。
この部分だけでも映画1本の内容はあると感じました。
福力