校長ブログ

2018年01月30日

専門家が見た「大学入学共通テスト」

昨日の日本経済新聞(1/29朝刊)に、試行された「大学入学共通テスト」について、東北大
学の柴山直教授(日本テスト学会 検討ワーキンググループ主査)から3つの重要な問題点
が指摘されていました。要点をまとめると以下のようになります。

 

1 受験生の学力を正確に測定するには、幅広い出題範囲で、易しい問題から難しい問題ま
  でを限られた時間内に解かせるようにしなければならない。しかし今回の試行テストを
  見ると、多くの科目において設問あたりの文章・資料の量が多くなった結果、設問数が
  減少している。そのため、テストの学力識別力、内容の妥当性、信頼性の低下が懸念さ
  れる。

2 「5つの選択肢の中から適当なものをすべて選べ」という解答形式は、一見するとより
  深い思考を求めているように見えるが、この形式をとることにより、実際にはテストの
  学力識別力は低下する。なぜなら、5つの二者択一問題であれば(この形式も結局、そ
  の力を見ているにすぎない)、5問正答から0問正答までの細かい個人差が識別できる
  にもかかわらず、この形式では、4問以下の正答は0問正答と同じになるからである。

3 記述式問題の採点の信頼性と実行可能性について、依然、疑問が残る。現在想定されて
  いる試験実施から結果報告までの期間内で、余裕をもって正確な採点が可能であること
  を示すことが、説明責任という観点から必須である。

柴山教授は、以上3点の指摘は、理論的技術論的にみて確実なことだけを述べているので、
非公開の1次データを使って分析すれば、事態の深刻さはより鮮明になると指摘しておられ
ます。

これらの問題点は予測できなかったのでしょうか。柴山教授は、高大接続システム改革会議
において、テスト理論の専門家が再三にわたって問題点を指摘したにもかかわらず、軌道修正
されることなく今回の試行調査に至ったことを、問題の原因として挙げておられます。
テスト実施まであと3年。50万人以上が受ける規模のテストとして、指摘された問題点はど
れもかなり重要だと思います。
福力