校長ブログ

2017年10月6日

祝 ノーベル文学賞

  

 

カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞されました。
氏は長崎生まれ、両親も日本人ということで、昨日メディアでも大きく報道されま
した。
私が印象に残っているカズオ・イシグロ氏の小説は『日の名残り』です。
この小説の主人公は、ダーリントン・ホールという邸宅に執事として勤めるスティ
ーブンス。邸宅はかつてのオーナーであるダーリントン卿の手を離れ、今は米国人
のファラディ氏の手に渡っているという設定で、スティーブンスが過去を色々と回
想するのですが、私が読んでいて色濃く感じたのは、斜陽となった英国のイメージ
でした。日本人が書いているというイメージ、雰囲気は全くなかったです。(原文
は英文ですし、カズオ・イシグロ氏は国籍を英国に移しておられるので、当然なので
すが)
だからでしょうか、今朝の新聞を読んで、イシグロ氏が「英国で育ち、教育を受けた
が、自分の中には常に日本がある。日本人の両親に育てられ、家では日本語を話して
いたので、ものの見方や世界観の大部分は日本人だと思う。それは作家にとっては良
いことだと思っている」(読売新聞プレミアム 2017.10.6)とコメントされているの
が、私にはとても意外でした。
しかしこの小説にもある儚さを美しいと思う心は、日本生まれの氏ならではの美意識
かも知れません。
福力