校長ブログ

2019年08月24日

2学期始業式

今週木曜日より、2学期がスタートしました。始業式は気温の上昇を鑑み、1学期終業式
と同じく校内放送にて実施しました。遅くなりましたが、始業式での私の挨拶をアップし
ておきます。

 

みなさん、おはようございます。
 夏休みが終わり、今日から2学期が始まります。この夏休みは充実していましたか?休み
の間のクラブ活動やPlusセミナー、そして宿題と、あっという間だったという人も多いと思
います。
 先日テレビを見ていたら、「夏休みはなぜあるのか?」ということが、クイズになってい
ました。皆さん、その答え、わかりますか?
「夏休みがなぜあるのか」についての答えは諸説あるようですが、その番組での答えは、「先
生が勉強をするため」というものでした。この答え、皆さんには意外でしょうか?
 実は、この短い休みの間、2学期の授業準備はもちろんですが、多くの先生方がさまざまな
研修に参加し、まさに「勉強」していたんです。私も何冊かの本を読んだり、いくつかの外部
での研修に参加し、この夏も新しい発見や驚きを経験しました。
 そのなかで、印象に残った講演がありましたので、今日はそのお話を少ししたいと思います。

 その講演は「動物福祉」をテーマにしたものでした。教育とは一見あまり関連のないもので、
日頃の研修とはずいぶん趣が異なりました。しかしそれだけに初めて知ることもたくさんありま
した。
 講演者は、来日して約30年になるエリザベス・オリバーというイギリス人女性。アニュマル
レフュージ関西(略称ARK)という団体の代表者で、今では大阪北部、能勢に広大なシェルター
を所有し、約150匹の犬と約150匹の猫を、25名のスタッフとともに世話をしているそう
です。そう、このARKは、飼えなくなった動物たちを保護しているNPO団体なのです。能勢のシ
ェルターには、ベッキーさんはじめ、多くのタレントがテレビ番組の取材で訪れているので、皆
さんもテレビで見たことがあるかも知れません。
 私が驚いたのは、日本と彼女の母国イギリスとの、動物福祉に対する考えかたや制度の違いが
あまりにも大きいということでした。
 例えばイギリスには、日本のようなペットショップはありません。ペットを飼いたいと思う人
の60%は、保護された動物がいるARKのようなシェルターへ、また30%の人はブリーダーの
下に行くのだそうです。ブリーダーはお金儲けのためにやっている人はいないので、子犬を飼い
たい人が、子犬を手に入れるのに1年から2年待つことも珍しくはないようです。さらになんら
かの理由で、ペットを飼えなくなった人には、そういうペットを受け入れてくれる慈善団体のシ
ェルターが数多く存在しています。また動物虐待を禁止するものから、畜産動物の輸送に関する
ものまで、およそ90もの動物福祉に関する法律があるようです。
 これに対して日本では、ブリーダーが大量にペットを繁殖して、大型ショッピングモールで販
売する一方、万一ペットを飼えなくなった場合、文字通りペットを捨てるか、保健所にもってい
って殺処分してもらうしか選択肢がありません。その結果、日本では、毎日500匹以上の犬や
猫がガスによって殺処分されているのが現状のようです。ちなみに日本での動物福祉に関する法
律は1973年に制定された法律ただ1つだそうです。

 飼い主の高齢化や死去、入院、転職に伴う転居など、家族環境が大きく変化することと、ペッ
トが飼えなく理由は関連していて、それは日本でもイギリスでも同じです。まれなことですが、
東北大震災や阪神淡路大震災のような大規模な災害によって、多くのペットが一度にその飼い主
を失うこともあります。ARKでは、1995年の阪神淡路大震災では、約600匹、2011年
の東北大震災では、約200匹の動物を保護したそうです。飼い主を突然失い廃墟のような街を
さまよっていた犬や猫にとって、ARKのスタッフによってさしのべられた手は、神さまの救いの
ように見えたことと思います。
 
 私がこの講演を聞いて一番疑問に思ったのは、すべての生き物の価値は同じという思想をもつ
仏教が広く信仰されている日本の方が、イギリスよりも動物に対する愛情は、現実には薄いのは
何故なのかということでした。
 講演終了後、少しお話をする機会があったのですが、オリバーさんは6歳の時に母親に頼んで
小さいロバを飼うようになった時以来、ほとんどの自分のお小遣いは、そのロバの餌代となり、
また外から家に帰ってきたときは、自分の食事の前に、ロバの食事を用意するということを厳し
くしつけられ、守ってきたそうです。

 英語のことわざに、Charity begins at home.というものがあります。日本語に訳すと、チャリティ
(博愛)は家庭で始まる。となるでしょうか。チャリティは、何も外で行うものだけではない、
むしろ身近な目の前の人や動物に対して行うことが、その第一歩なのだというような意味だと思い
ます。オリバーさんがARKを日本で設立し、多くの動物を救うようになったきっかけも、まずは自
分の家から始まったのだなと気づかされました。

 皆さんは、この夏、どんな気づきや発見がありましたか?
 今日から2学期が始まります。まず来月初めに青凌祭があります。皆さんが、積極的にいろいろな
役割にチャレンジし、「ひとつ上の自分」を実感できることを願っています。
 それでは、これで2学期始業式にあたっての私の話を終わります。ありがとうございました。