校長ブログ

2021年03月3日

アニマルウェルフェア

大手鶏卵業者が、自民党の農水相に多額の現金を提供したのではないかと
いう贈収賄の事件がニュースとして流れていますが、そのニュースの中で、
「アニマルウェルフェア」という聞き慣れない言葉が出てきます。この言
葉、皆さんはご存じでしょうか?日本語に訳すと「動物福祉」となります
が、実は最近のヨーロッパで広く共有される概念となりつつあります。

 

日本でも卵は、「物価の優等生」と言われて久しいですが、今もとても安
い値段で売られています。戦後の農産品の中でも、ずばぬけて価格が安定
している商品といってよいでしょう。しかし、これは鶏卵業者の経営努力
と鶏の犠牲の下で成立したものと言えるのです。
卵を産む鶏たちは、その一生を身動きできないほど狭いケージの中で過ご
します。その狭さは驚くべきもので、体の向きを変えることすら困難な狭
さです。ただそのような環境で卵をいわば大量生産することで、現在の安
い価格が成り立っているのです。

 

このような現状に対して、たとえ家畜でも、もっとその生育環境のことを
考えるべきだという考えが急速にヨーロッパでは賛同を集めつつあります。
もう少し広いスペース、あるいは止まり木を設けることを法律で義務づけ
るべきだという考えです。そしてこれが国際基準となった場合、養鶏業者
にとっては、広いスペースを確保するための大規模な設備改修が必要とな
るわけです。今回の贈収賄事件は、その基準が日本で採用されることをお
それた鶏卵業者が、この国際基準案に反対するよう農水相にはたらきかけ
たのではないかと言われているのです。

 

かつてチョコレートのカカオを生産している現場が、子どもたちを不当に
搾取している厳しい労働現場となっているのではないかという考えから、
フェアトレードという概念が生まれたりしました。この家畜の環境を考え
るという考えも、遅かれ早かれ国際基準となる日がやってくるように思う
のは私だけでしょうか。
福力