校長ブログ

2017年11月7日

寂しい生活③

あれほど節約したのに、なぜ電気代は減少するどころか増えてしまったのか。
それは「春から初夏へと季節が移行して気温が上がり、冷蔵庫の消費電力が
自動的に上がったことが電気代を押し上げたのではと推測される」(稲垣氏)。
その電気代に比べれば、換気扇をとめたり、明かりをこまめに消すようなこ
とで節約される電力は、たかが知れたものだったのです。
そこで彼女はどうしたか?
目標を電気代の「半減」ではなく、「全減」へと切り替えたのです。

 

「「電気はないもの」として暮らす。で、どうしても必要な時だけ、必要最
低限の電気を使わせていただく」(本書40ページ)

 

冷蔵庫を除くすべての電化製品のプラグをコンセントから抜き、その夜から
彼女の世界は一変しました。例えば、帰宅時はこんな感じです。

 

「一人暮らしなので、当然のことながら室内は真っ暗だ。で、普通ならすか
さず電気をぱちっとつけるところだが、もちろん電気は「ない」のだからそ
んなことはしない。まずは玄関にしばらくじっとして、暗闇に目が慣れるの
を待つ。」(本書41ページ)

 

このくだりを読んで、不謹慎ながらも私は笑ってしまいました。しかし、彼
女は大まじめでこれを実行し続けるのです。すると、着替えたり、トイレで
用を足したり、風呂に入ったりすることが、電気をつけなくともできるとい
うことに気づくのです。
そして、電気のない生活に、彼女は困るどころか、これまで聞こえなかった
虫の音や風の音に新鮮な感動をすら味わうに至るのです。
福力