校長ブログ

2017年11月27日

現代は19世紀の欧州か?

 

1週間ほど前の読売新聞の1面に掲載されたコラムは、とても興味深いものでした。
著者は細谷雄一慶大教授で、その内容は、一言でいえば、現代の国際秩序が19世紀の
欧州のそれと似たものになってきているという指摘でした。
では19世紀の国際秩序とは、どんなものだったのか?細谷教授は以下のように、まと
めておられます。

「それは、イデオロギーによる正義を掲げ、二元論的に世界の分断が固定化されてい
た20世紀の東西冷戦時代とは、大きく異なる国際秩序だった。重要なのはパワーであ
り、冷徹な国益の計算であり、長期的な視野からの外交戦略だった。」
                        (11月19日読売新聞朝刊1面より)

それを象徴しているのが、言うまでもなく米国のトランプ大統領というわけです。
彼は「歴代の大統領とは異なり、民主主義や人権、法の支配といった、米国が長年に
わたって擁護してきた中核的な理念に、あまり大きな関心を示していない」(細谷氏)
と。アメリカファーストという、誰の目にもわかりやすい国益第一主義のスローガンを
掲げて、各国との取り引きを外交を通じて行う。このスタイルは、確かに19世紀の欧州
外交とそっくりです。
国益と国益がぶつかる外交において、重要となってくるのは中長期的な戦略です。細谷
教授がこのコラムの最後で書いておられるように、国益と国益がぶつかった結果、欧州
は、その後二度の世界戦争に見舞われます。現代の近未来がそんな悲劇を三度繰り返さな
いように、私たちは今こそ、歴史に学ばなければならないのかも知れません。

さてトランプ大統領の最大のディールの相手は、言うまでもなく中国の習近平主席です。
上記の本は、タイトルは『米中激突』とちょっと物騒ですが、トランプ大統領誕生から数
ヶ月の間、米国と中国がどのような戦略を駆使して互いの取り引き(ディール)を行って
きたかを、在米の民主化運動家である著者の陳破空氏の目で追っています。
リアリズムの極地とも言えるその内容は、まさに19世紀の政治そのものでした。
福力